術前治療としてのチロシンキナーゼ阻害薬や免疫チェックポイント阻害薬の有効性を検討する臨床試験が多数行われている.迅速な薬剤開発を念頭に,予後と相関するとされる切除材料における病理組織学的な治療効果がエンドポイントとして用いられることが多くなっている.指標としてはviableな腫瘍細胞が消失している状態である病理学的完全奏効(pathologic complete response,pCR),および原発巣の腫瘍床に占める残存腫瘍の割合が10%以下と定義される病理学的著効(major pathologic response,MPR)が用いられるが,正確な判定には肉眼的な観察に基づいた十分な組織の切り出しが必要である.世界肺癌学会は具体的な治療効果判定の際の注意点,判定基準を発表し,評価法の標準化を図っている.これに沿うように日本肺癌学会からも肺癌取扱い規約としての病理学的判定基準が公開された.今後日常診療においてもpCRやMPRの意義の評価がなされるようになり,予後の層別化,ひいては術後の治療方針の決定に寄与することが期待される.